感染症の歴史では、第1回で天然痘・ペスト、第2回では結核・エイズ、
第3回では新型インフルエンザについての記事を書きました。
今回はは感染症の歴史シリーズ最後の【マラリア】です。
マラリアといえば、アフリカで未だに大流行しているイメージの
感染症かと思います。
しかし、日本国内でも毎年50人前後がマラリアを発症しています。
驚いた方もいるでしょうが、安心してください。
日本にはマラリアは定着していません。
ではなぜ、日本でマラリアを発症する人がいるのかというと
アフリカ、アジア、オセアニア、中南米を旅行した人が現地で感染し、
帰国後に国内で発症して病院にかかるからです。
マラリアの流行地域の図を載せます。
(参照:厚生労働省検疫所https://www.forth.go.jp/useful/malaria.html)

まず、前提知識としてマラリアの感染経路について書きます。
マラリアは上の図の地域にいる「ハマダラカ」というかに刺されて、
マラリア原虫に感染することで成立します。
つまり、風邪など一般的な感染症とちがってヒトーヒト感染はしません。
これまで記事で取り上げた、新型インフルエンザや結核などと
大きく異なる点です。
だから、日本にマラリア感染者がいても普通に日常生活を送っているなら
それが自分にうつることはありません。
では、マラリアの歴史について見ていきましょう。
世界最古のマラリアは3000万年前の琥珀の化石の中にある蚊(カ)から
見つかったという説が有力です。
ヒトの生死に大きな影響を与え始めたのは1万年前と言われています。
このころから現在に至るまでの長い年月、
ずっと大勢の命を奪ってきました。
古代ギリシャや中国をはじめとして、紀元前からすでにマラリアが認知されていました。
その後もマラリアとの戦いがずっと続いています。
歴史的に大きな出来事があったのは1820年です。
この年、世界初のマラリア治療薬である「キニーネ」が誕生しました。
それから60年の月日を経て、1880年にマラリア原虫が発見され、
1902年にマラリア原虫がハマダラカによって媒介されていることが判明しました。
このような偉大な発見はあっても、依然としてマラリアに対する
ワクチンは開発できていません。
マラリア原虫は遺伝子を変化させて薬剤耐性を獲得することが
理由として挙げられます。
ワクチンがなく、予防方法はハマダラカに刺されないことであるため、
現在でも多くの感染者や死者が出ています。
2018年のマラリア感染者数は世界で2億2800万人、死者数は40万人です。
感染者の90%以上がアフリカに住んでいます。地域によって大きな偏りがあります。
ここ10年間で多少の増減を繰り返していますが、
感染者数に大きな変化はありません。
アフリカの医療レベルが少しずつではあるものの上昇しているので、
死者数に関しては、減少傾向にあります。
2009年のマラリアによる死者数が78万人だったのに対し、
2018年では40万人に減少しています。